10月・神無月 澄んだ光のなかで、実りを確かめる

10月・神無月 澄んだ光のなかで、実りを確かめる

2026年(令和8年)10月

今年の10月23日は、少し特別な日です。

この日は二十四節気の「霜降(そうこう)」。露が霜へと変わりはじめる、秋の最後の節気です。そして同じ日の夜は、旧暦9月13日。お月見のもうひとつの夜、「十三夜」にあたります。

霜降と十三夜が同じ日に重なるのは、1988年以来、38年ぶりのこと。次に重なるのは2064年です。

秋が深まり、空気が澄みきっていく季節に、ふたつの暦がそっと手を重ねる。10月は、そんな巡り合わせを抱えた月です。

空気が澄むと、遠くのものがよく見えるようになります。月の輪郭も、山の稜線も、そして自分自身が一年かけて育ててきたものも。今回は、2026年10月の暦を上旬・中旬・下旬の三つの流れに分けてたどりながら、この月の受け取り方と過ごし方をご紹介いたします。

「神無月」という名前について

10月の和風月名は「神無月(かんなづき)」です。

よく知られているのは、全国の神様が出雲に集まり、各地の神様が留守になるため「神無し月」と呼ばれる、というお話です。そのため出雲地方では、この月を「神在月(かみありづき)」と呼んできました。

一方で、言葉の成り立ちとしては、「無」は「の」を表す助詞で、本来は「神の月」という意味だったとする説が有力とされています。神様がいなくなる月ではなく、神様を祀る月。どちらの説にも、この季節が実りと感謝に深く結びついていたことが表れています。

なお、神無月はもともと旧暦10月の名前です。2026年の旧暦10月は、新暦の11月9日から始まります。

上旬 10月1日から10月10日 はじまりの光

10月1日 天赦日と一粒万倍日が重なる日

10月は、暦のうえで最も格の高い吉日とされる「天赦日(てんしゃにち)」から始まります。

天赦日は、天がすべての罪を赦(ゆる)す日とされ、年に数回しか巡ってきません。秋の天赦日は「戊申(つちのえさる)」の日と定められており、今年はそれが10月1日にあたります。

さらにこの日は、一粒の籾が万倍に実るとされる「一粒万倍日」とも重なります。新しいことを始める、はじめの一歩を踏み出すのに、昔から良いとされてきた組み合わせです。

正直にお伝えしておくと、この日の六曜は「仏滅」です。ただ、天赦日は他の凶日を打ち消すほどの大吉日と考えられてきました。吉屋としては、この日を「小さく、けれど確かに始める日」として受け取りたいと思います。

また10月1日は、日本では古くから「衣替え」の日でもあります。平安時代の宮中行事「更衣(こうい)」に由来し、明治以降は6月1日と10月1日が夏服と冬服の切り替えの日として定着しました。装いを改めることは、気持ちを改めること。天赦日の朝に、クローゼットの中身を秋冬のものへと入れ替えてみるのも、この日らしい始め方です。

10月1日から7日 重ね月の余韻

九星気学では、月の切り替わりは二十四節気の「節」に合わせて行われます。そのため10月1日から寒露前日の7日までは、まだ9月の月盤、つまり一白水星が年と月の両方の中心に重なる「重ね月」の続きです。

9月にご紹介した「動かないことで、整う」という流れが、もう少しだけ続いています。始めることは小さく、整えることは丁寧に。上旬はそのバランスを大切にしたい時期です。

中旬 10月8日から10月19日 実りを捧げる

10月8日 寒露(かんろ)

10月8日15時29分(日本時間)、太陽が黄経195度に達し、二十四節気の「寒露」に入ります。北米太平洋夏時間では10月7日23時29分です。

江戸時代の暦の解説書『こよみ便覧』は、寒露を「陰寒の気に合って、露結び凝らんとすれば也」と記しました。冷たい空気に触れて、露がいまにも凍りそうになる頃という意味です。

寒露の期間には、七十二候が次のように移ります。

鴻雁来(こうがんきたる) 10月8日頃 雁が北から渡ってくる頃。

菊花開(きくのはなひらく) 10月13日頃 菊の花が咲きはじめる頃。

蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり) 10月18日頃 戸口で秋の虫が鳴く頃。ここでいう「きりぎりす」は、今のコオロギのことと考えられています。

10月8日から 月の星が九紫火星へ

寒露とともに、九星気学の月盤も切り替わります。2026年の10月(10月8日から11月6日)は、戊戌(つちのえいぬ)の月。中宮に入るのは「九紫火星」です。

一白水星が「水」なら、九紫火星は「火」。九星の最後、九番目に位置する星で、太陽の光、明るさ、知性、美しさを象徴するとされます。火が闇を照らすように、隠れていたものが明るみに出る、物事がはっきりと見えてくる、という性質を持つ星です。

一白水星の年のなかに、九紫火星の月が巡ってくる。静かに澄ませてきた水面に、光が差し込むようなイメージです。9月に内側を整えた方ほど、10月は自分にとって本当に大切なものが、くっきりと見えてくるかもしれません。

ただし火の光は、見たくないものまで照らすことがあります。見えてきたものを急いで裁くのではなく、まずは静かに受け止める。それが九紫火星の月との、良い付き合い方だと考えています。

10月11日 新月 旧暦9月のはじまり

10月11日0時50分(日本時間)、新月を迎えます。北米太平洋夏時間では10月10日8時50分です。この新月の日が旧暦9月1日となり、ここから数えて13日目が十三夜になります。

10月15日から17日 神嘗祭(かんなめさい)

伊勢の神宮では毎年10月15日から17日にかけて「神嘗祭」が行われます。その年に初めて収穫された新穀を、最初に天照大御神にお供えし、実りに感謝するお祭りです。

神宮では年間1500回に及ぶお祭りが行われていますが、神嘗祭はそのなかでも最も重要なお祭りとされています。天皇陛下が皇居でお育てになった稲穂とともに、全国の農家から奉納された稲穂も「懸税(かけちから)」として内玉垣に懸けられます。都も地方も、ひとつの感謝のもとに実りを捧げる光景です。

11月23日の新嘗祭は、この神嘗祭のあとに行われます。まず最初の実りを捧げ、それから自分たちがいただく。この順番に、日本の暮らしのなかにある感謝のかたちが表れています。

私たちの暮らしに置き換えるなら、この3日間は「最初の実り」に目を向ける時間です。今年、最初に形になったこと。最初に手にした成果。それを誰のおかげで得られたのかを、思い出してみてください。

10月17日 甲子(きのえね)の日

神嘗祭の最終日である10月17日は、六十干支のはじまりにあたる「甲子」の日です。60日に一度巡ってくる、ひとつの周期の始まりの日として、古くから物事を始めるのに良い日とされてきました。

最初の実りに感謝した直後に、新しい周期が始まる。暦の並びとして、とても美しい流れです。

下旬 10月20日から10月31日 霜の降りる夜に

10月20日 秋の土用入り

10月20日18時13分(日本時間)、秋の土用に入ります。北米太平洋夏時間では10月20日2時13分です。土用は立冬前日の11月6日まで続きます。

土用は、季節と季節のあいだにある移行期間です。五行思想では「土」の気が巡るとされ、古くから土を動かすこと(土いじり、基礎工事など)を控えるならわしがあります。ただし「間日(まび)」と呼ばれる日は、その限りではないとされてきました。秋の土用の間日は、未(ひつじ)・酉(とり)・亥(い)の日。今年の10月では、24日、26日、28日がこれにあたります。

季節の変わり目は、体も心も揺らぎやすい時期です。大きく動くよりも、冬に向けて足元を整える。九紫火星の光で見えてきたものを、この期間にゆっくり消化していくのも良いでしょう。

10月20日 えびす講

同じ10月20日は、「えびす講」の日でもあります。

神無月に出雲へ出向かず、各地に残って人々を見守る「留守神(るすがみ)」とされてきたのが、七福神の一柱、えびす様です。えびす講は、そのえびす様を祀り、一年の無事に感謝して、商売繁盛や豊作、大漁を願う行事です。

10月20日のえびす講は、とくに東日本で広く親しまれてきました。家庭の中でけんちん汁やあんころ餅、魚などをお供えするならわしがあり、東京・日本橋では前日の19日から20日にかけて「べったら市」が開かれます。関西では1月10日の「十日戎(とおかえびす)」が有名ですが、京都のゑびす神社のように10月20日に「二十日ゑびす」を行うところもあります。「えびす講」は、俳句では初冬の季語にもなっています。

神様が出かけている間も、家と暮らしを見守ってくれる存在がいる。そう考えると、えびす講は「身近なものへの感謝」の日ともいえそうです。

10月22日 己巳(つちのとみ)の日

巳の日のなかでも、60日に一度巡ってくる「己巳の日」は、弁財天にゆかりのある日として特に大切にされてきました。金運や芸事にまつわる日とされています。

10月23日 霜降と十三夜 38年ぶりの重なり

10月23日18時38分(日本時間)、二十四節気の「霜降」に入ります。北米太平洋夏時間では10月23日2時38分です。

『こよみ便覧』は霜降を「露が陰気に結ばれて霜となりて降るゆへ也」と記しました。朝晩の冷え込みで、露が霜へと姿を変えていく頃です。七十二候は次のように移ります。

霜始降(しもはじめてふる) 10月23日頃 霜が降りはじめる頃。

霎時施(こさめときどきふる) 10月28日頃 小雨がときどき降る頃。

楓蔦黄(もみじつたきばむ) 11月2日頃 もみじや蔦が色づく頃。

そしてこの夜が、十三夜です。

十三夜は旧暦9月13日の月で、「後(のち)の月」とも呼ばれます。中国から伝わった十五夜のお月見に対し、十三夜は日本で生まれた風習とされ、延喜19年(919年)に宇多法皇がこの夜の月を「無双」、つまり並ぶもののない美しさだと讃えたことが始まりと伝えられています。

十五夜には里芋を供えることから「芋名月」と呼ぶのに対し、十三夜は栗や豆を供えることから「栗名月」「豆名月」とも呼ばれます。お団子は十三夜にちなんで13個を供える地域が多く見られます。また、十五夜と十三夜のどちらか一方だけを見ることを「片見月(かたみづき)」といい、縁起が良くないとする言い伝えもあります。9月25日に十五夜の月をご覧になった方は、ぜひこの夜の月も見上げてみてください。

十三夜の月は、満月まであと数日という月です。9月の十五夜が「満ちる手前」の月だったとすれば、十三夜はさらにその手前にある月。昔の人々は、それをわざわざ選んで愛でてきました。

露が霜になる夜に、まだ満ちきらない月を眺める。暦のうえで冬の入口が見えてくるこの夜は、今年の実りを数えながら、ここから先に育てていきたいものを静かに思い描くのにふさわしい夜です。

10月26日 満月

10月26日13時12分(日本時間)、満月を迎えます。北米太平洋夏時間では10月25日21時12分です。

英語圏では、Harvest Moon(収穫の月)の次に来る満月を「Hunter's Moon(狩猟の月)」と呼ぶ習わしがあります。刈り入れを終えた畑で、冬に備えて狩りをした季節の名残です。日本で栗や豆を供えた十三夜と同じように、ここでも月は、冬支度の暮らしと結びついています。

数から見る10月

数字の「10」は、1から9までをひとめぐりして、初めて位がひとつ上がる数です。漢字の「十」には、数の10のほかに「全体、完全、すべて」という意味があり(『字通』)、「十分」「十全」といった言葉にもその意味が生きています。

九星の最後の星である九紫火星が中心に入り、「十」の月を迎える。ひとつのめぐりが満ちて、次の位へと上がっていく。10月は、今年の実りが「十分」であったことを確かめる月だといえるかもしれません。

2026年10月の吉日

天赦日 10月1日(木)

一粒万倍日 10月1日(木)、11日(日)、14日(水)、23日(金)、26日(月)

10月1日は天赦日と重なる今月いちばんの吉日です。10月23日は霜降と十三夜、10月26日は満月の日にあたります。

大安 10月2日、8日、13日、19日、25日、31日

寅の日 10月7日、19日、31日

出て行ったものが戻ってくるとされる日。10月31日は大安と重なります。

巳の日 10月10日、22日(己巳の日)

甲子の日 10月17日

正直にお伝えしておくこと

10月11日は一粒万倍日ですが、不成就日とも重なります。また10月19日は大安と寅の日が重なる一方で、こちらも不成就日にあたります。吉と凶が同居する日は、大きく打ち出すよりも、準備や見直しに使うのがおすすめです。

星の動きから見る10月

※以下は西洋占星術に基づく解釈で、科学的に証明されたものではありません。季節の受け取り方のひとつとしてお読みください。

10月3日から 金星逆行

金星は10月3日に蠍座で逆行に入り、11月14日(北米では11月13日)に天秤座で順行に戻ります。金星は愛情、人間関係、美、お金にまつわる価値観を司るとされる星です。逆行期間は、新しく手に入れるよりも、すでに持っているものの価値を見直す時期と考えられています。九紫火星の月の「見えてくる」流れとも重なります。

10月11日 天秤座の新月(日本時間0時50分)

調和と関係性の星座で迎える新月です。

10月23日 太陽が蠍座へ(霜降)

霜降の瞬間、太陽は蠍座に入ります。蠍座は、深さ、集中、本質を見つめる力にまつわる星座とされます。

10月24日から 水星逆行

水星は10月24日に蠍座で逆行に入り、11月14日(北米では11月13日)に順行に戻ります。言葉、契約、連絡、移動にまつわる行き違いが起こりやすいとされる時期です。大切な契約や約束は、できれば10月中旬までに済ませておくか、いつも以上に丁寧に確認するのがよいとされています。

10月26日 牡牛座の満月(日本時間13時12分)

五感と豊かさ、実りを司るとされる牡牛座で迎える満月です。

おわりに

10月は、澄んだ空気のなかで、光がものごとを照らし出す月です。

天赦日の朝に小さく始め、神嘗祭の頃に最初の実りに感謝し、えびす講で身近なものへの感謝を思い出す。そして霜降の夜、十三夜の月を見上げながら、今年の実りを確かめる。

九紫火星の光は、ときに見たくないものまで照らします。けれど、はっきり見えるということは、次に何を育てるかを選べるということでもあります。

38年ぶりに霜降と十三夜が重なる10月23日の夜。どうか少しだけ時間をつくって、月を見上げてみてください。

運は、育てるもの。どうぞ実り多き10月を。

※北米にお住まいの方へ:本文中の時刻は日本時間です。北米太平洋夏時間では16時間前、東部夏時間では13時間前になります。